「私考 知的障害者にとって自立とは」  第3章 エイブル・アート・ムーブメント

この記事は、2005年9月17日のものです。

前回の「アウトサイダー・アート」では、不遇な運命の中で、彼らが必死で掴んだ、かけがえのない夢の世界を紹介しました。今、我々は、彼らの世界を世に認め、彼らと共に、新しい世界を築き上げようとしています。エイブル・アート・ムーブメントとは、そのような新しい取り組みのことです。フィールド・オブ・ドリームスを今ここに。

第3章 エイブル・アート・ムーブメント

エージゾンは エライひーと
そんな〜の〜 ジョ〜シ〜キ〜
パッパ パラリラ ピーヒャラ ピーヒャラ

発達障害児も、本人にあった適切な指導を与えると、通常以上の能力をみせることもある。』・・・だって〜 そんなの常識ジャン! 今頃、何言ってんの? トーマス・エジソンアルベルト・アインシュタインレオナルド・ダ・ヴィンチウォルト・ディズニートム・クルーズ、みんなみんな、発達障害児だったんですよ。みんな立派になりましたよね。重度知的障害児も生まれたときから重度じゃあなかったんですよ。ちゃんと適切な指導を与えなかったから重度になっちゃったんじゃないですか!もっと、早く気付きなさいよ〜ほんと。こう考えると、この教育の認識遅れは重大な罪ですよね!文部省・厚生省!君たちは、しかと、反省しなさい!そもそも、ジョウシキのレベルが低いんだよね、チミ達は。赤塚不二夫先生を見習いなさい!プンプン! 赤塚不二夫と言えば、

  これでいいのだ!

ですが、これこそがジョウシキというものなんだ。誰が作ったか知らないが、「ここはこーだ!あーだ!」と、勝手に決めないでほしいよね。「この子だったら、こーする」「あの子だったら、あーだね」とか、どうして見てくれないの?みんなそれぞれ違うんだから、ジョウシキが。
そりゃ〜みんな好き勝手なことやってたんじゃ駄目だってことぐらいわかるよ。だけど、みんな同じことをしなくちゃいけないってわけじゃないよね。小さいときから、シツケだとかいって、決まったことばかりやらされる。これがどうもオカシイ! 例えば、それがどうもしっくり行かないというか、性に合ってない子はいるだろう。そんな場合、その子は違うやり方を考えるよね。コレが必要なのよ!コレが!「そこを見て下さいな!」と、お願いしているんですよ!私は。
だけど、そこを見ることが苦手というか、性にあってない人が多いんだろうね、現代人には。ストレスの塊だからね。ほんと。
だから、それらをひっくるめて、いっしょくたんにして考え直してみると、つまり

  互いに互いの違いを認め合い、共に分かち合おう

と、なるんですわ。要するに、「みんなで持ち寄って、ちゃんこ鍋でも食べようよ」ということだな〜 と、いうわけでエイブル・アートって奴をやってみようじゃあ〜りませんか?というわけですよ。

「え!え〜ぶるあ〜と〜、何じゃそれ? それ、うまいんか?」  「あ〜、うまいうまい!」
「え!え〜ぶるあ〜と〜、何じゃそれ? それ、きれいんか?」  「あ〜、きれいきれい!」
「え!え〜ぶるあ〜と〜、何じゃそれ? それ、おもろいんか?」 「あ〜、おもろいおもろい!」
「え!え〜ぶるあ〜と〜、何じゃそれ? それ、それ、・・・」  「えーい、それじゃ、こちらを見て下さいな!」

  エイブル・アートwebギャラリー

そして、今、エイブル・アート・ムーブメントは、こんな風に起こってます。

・素晴らしいアートは、わたしたちの心に優しく触れていきます。そして、 わたしたちは忘れていた何かがこみあげてくるのを感じます。「美しい」と思うときは、きっと、そんなときではないでしょうか。

・人間のなかにいながら、人間のなかにいなかった人たちが、人間のなかに帰ってゆく―<ABLE ART MOVEMENT/可能性の芸術運動>は、現代社会に生きる人たちが、アートをとおして人間性を回復させ、アートと人間、社会と人間の新しい関係を築いていこうとする市民運動です。
人は誰でも、自分だけの感じ方をもっています。その感じ方をまっすぐに表現でたとき、それを認められたとき、魂の震えを感じます。そして、それを分かちあえとき、ともにあることの喜びを実感できます。

・こんなアートに会えて、ほんとうによかった。うれしくて、うれしくて、この気持ちを誰かに伝えたい。

・新しい時代の新しい福祉のあり方が問われる中で、障害のある人たちの生命の質、生活の質、人生の質を高め、いきいきと人間らしく生きることのできる福祉施設や作業所が求められています。

・「エイブル・アート」は、人間の存在の不思議さや生きることの意味を、障害のある人たちのアートを通じて問い直す市民芸術運動です。障害のある人の表現を従来のアートの枠に取り込んだり、新しい美術のジャンルを創ろうという狭い活動ではなく、障害とは何か、人間とは何かと考える取り組みなのです。

・誰でも「語りえぬもの」があります。それは、とてもなつかしく、とても大切なものと感じています。そこから来て、そこに帰っていくところであるからです。
アートを介してひととひとが出会う。ひととまちが出会う。そこに新しいものが見つけられたら、未来はきっと変わるはず。

・社会が大きく変動するなかで、すべての人が生きやすい社会をつくっていく「ソーシャル・インクルージョン(社会的包括)」という概念が注目されています。ソーシャル・インクルージョンとは、誰もが健康で文化的な生活を送ることができるように、人々を孤独や排除から救い、社会の構成員として包み込むことをめざす概念であり、近年ヨーロッパの国々では、社会変革をうながす大きな役割をになっています。

・一方、グローバル化が急速に進み、人と人との間の情報や貧富の格差が大きくなりつつある現代社会のなかで、私たちは「他者とともに生きる」ことの難しさを実感しています。
このような時代にあって、私たちは異なる存在、多様な文化が共生することを幸福と感じる社会「インクルーシブ・ソサエティ」をつくっていくために、アートに大きな可能性があると考えています。なぜなら、アートによって一人ひとりがアイデンティティを回復するとともに、他者や社会とのつながりを取り戻すことができるからです。

・「自然のなかに文化をみる」「文化のなかに自然をみる」

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もう、お気づきになられたかと思いますが、エイブル・アート・ムーブメントは社会変革です。しかも、相当に大規模なムーブメントになる可能性を秘めています。次回は、このムーブメントの可能性を障害者の側から見つめてみたいと思います。